「真実の言葉を語れば、かならず周囲の古い世界と摩擦をおこすものです。できあがった体制や権威は、そんな新しい考えかたや言動に不安をおぼえることでしょう。おそれながら、上人さまの説かれることの一つ一つが鋭い矢のように彼らの胸に突き刺さり、肉をえぐるのです。ことに上人さまがつねづねいわれる選択ということは、骨から肉をけずりとるように、これまでの仏法の権威を否定する教えです。わが国の仏法は、異国から伝わってくる教えや知識を、必死でとり入れ、つけくわえ、つけくわえして大きく豊かに花開いた世界です。ところが、上人さまは、それらの教えや、修行や、教説を一つ一つ捨てていこうとなさっておられます。知識も捨てる。学問も捨てる。難行苦行も、加持祈祷も、女人の穢れも、十悪五逆の悪の報いも、物忌みも、戒律も、なにもかも捨てさって、あとにのこるただ一つのものが念仏である、と説かれております。これまでそのような厳しい道にふみこまれたかたは、だれ一人としておられません。それが真実だからこそ危ういのです。危うければ真実だと、わたくしは思いました。」
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