毎日新聞 2013年01月04日 15時00分(最終更新 01月04日 15時05分)
1912(明治45)年4月、東京の映画館で「ニッパールの変形」の題で公開されたとだけ分かっていたアニメ映画の内容を、独バイエルン州立図書館のフレデリック・S・リッテン研究員(48)=日本アニメ史=が突き止めた。人や亀など単純な映像だが、当時は日本人が初めてアニメを見た時期にあたり、長年の謎だった「原体験」の一端が判明。世界に冠たる現代日本アニメの出発点を知る発見だ。【鶴谷真】
作品は、本格的アニメの創始者とされる仏のエミール・コール(1857〜1938)が手がけたドタバタ劇。リッテンさんから知らせを受けた松本夏樹・大阪芸術大非常勤講師(60)=映像文化史=が明らかにした。
リッテンさんは、1912年当時の英国の映画雑誌に「ニッパールの変形」の英語版タイトルを見つけ、内容がフランスでDVD化されていたエミール・コールの1911年末の作品と完全に一致した。人物が亀や月と戦った揚げ句にサメにのみ込まれる3分半の白黒で、手描きと切り絵を組み合わせてコマ撮りしたらしい。リッテンさんは近く、詳細を論文発表する予定。
1917(大正6)年には、幸内(こううち)純一監督の「なまくら刀」など国産初のアニメ映画が相次いで3本公開されている。アニメ史研究家の渡辺泰さん(78)=大阪府寝屋川市=は「日本アニメの祖たちが『ニッパールの変形』を見て、創作の刺激を受けた可能性は十分にある」と話す。なお、渡辺さんは本作に先立つ1907(明治40)年に「愉快な百面相」として知られる米国アニメが東京で公開された記録を、既に発見している。
板倉史明・神戸大准教授(日本映画史)の話 当時、日本人が既に見ていた実写映画と違い、現実にはないファンタジーを描くアニメは驚きだったろう。国産アニメを生むきっかけになった可能性があり、重要な発見だ。
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