映画「暁の追跡 」 監督:市川崑
石川巡査(池部良)と、オチャメな友子(杉葉子)
そんなに凝った作りの話に観えないんですが、味があります。
警察側からの話なので、若干引いて観はじめましたが、一巡査の目を通して、1950年昭和25年当時の世間が見え始めると、関心はその方へと移っていきます。
これが新橋駅前だ。
兵隊から帰って来て警官になった石川巡査(池部良)は、職についてまだ日が浅い。
東京・新橋駅前のポリスボックスが彼の勤務場所。
近くの中華食堂の娘・友子(杉葉子)と恋仲。ふたりで江の島に行き大いに楽しんできた。
ある日、ポリスボックスに連れてこられた末端の麻薬売人が石川巡査の目を盗んで逃亡。石川巡査は追跡したが犯人は新橋駅近くの国電(JR)高架で電車に轢かれてしまう。(自殺のようにみえる) 犯人の死に対する責任と、悲惨な現場を間近にみた石川は、我を失い自閉気味。自分にまず出来ることは犯人宅で焼香することだ。探し当てた家は貧しい街の路地の奥にあった。石川巡査は、犯人の妹・雪江に「官憲は弱きを助けない」と罵られた。その言葉は実は石川の心の中で繰り返し考えている事と相通じる。
ある企業の労働争議のもめ事に、警察はトラック2台分の警官を派遣し、ストに介入する。その中に石川もいたが、もう警官という職が嫌になった。彼は転職活動を始める。ここが面白い。知り合いを伝って、大和証券など普通の会社を数社巡るが、どの会社も不況で人員削減中。そんな最中に石川は、窓越しに殺人現場を目撃する。この事件はその後、思わぬ展開になる。
映画後半、麻薬密売組織のボスを逮捕するため、人気のいない倉庫地帯にトラック数台に分乗した警官たちが密かに到着、配置に着く。東京大空襲で被害を受けた倉庫の、レンガの外壁がわずかに残っている、そんな風景の地域だ。沈黙した緊張の夜明け。突如派手なドンパチが始まり映画はクライマックスを迎え、娯楽映画として映画は終わる。 (寝込みを襲われ、機関銃を乱射する組織のボス →)
しかし映画は一方で、別なメッセージを観客に伝えてくる。
警察は、警官の集団力で、広域暴力団やデモに立ち向かう。映画はそう言っているようだ。
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