レイチェル・カーソンの『沈黙の春』は、春が来ても鳥が鳴かない、花が咲かないという恐怖を書いた、人類の近未来の光景をタイトルにした名著でした。今、私たちの周りに起きていることは、彼女の予見がそのまま現れています。多くの素晴らしい人材ががんや自殺で失われ、子どもたちがアレルギーやいじめで苦しみ、親が子供を殺すという現代社会の異様は、まさに、人類に未来がなくなるような危機が迫っていることを教えているものです。
食性を狂わせることは、人類の未来を狂わせることに直結します。例えば、それを如実に物語るのが、1980年代以降に広く知られるようになった「狂牛病」(牛海綿状脳症)の問題です。配合飼料として与えられた肉骨粉の中の異常なタンパク質(異常プリオン)が原因ではないかと疑われているわけですが、雑食動物に対してならともかく、草食動物である牛に肉骨粉を与えるなんて、どう考えてもおかしいことです。
人間用の食肉として可食部を取り除いた後の、牛や豚、鶏の屑肉や皮、内臓、骨などでできた肉骨粉。おそらく、そのままでは牛も食べないはずです。他の穀物などの飼料と配合するからこそ、牛が気づかないうちに食べさせられているのでしょう。牛由来の肉骨粉を牛に与えれば、それは「共食い」になります。草食動物が共食いする光景など、誰も見たことがないはずです。少し考えたら尋常ではないことに気づくと思うのですが、感覚的なレベルで、このことに対して何の疑問や躊躇も抱かなかったのでしょうか? 不思議でなりません。
そもそも、牛に肉骨粉を与えるのは、成長促進や乳脂肪含有量の増加が目的とされているわけですが、その一環として誕生させたのが、「妊娠中なのにお乳が出る牛」です。通常、妊娠中の哺乳類からお乳が出ることはありえません。あくまでも、出産後の子どもに与えるために、初めて出てくるものです。ところが、肉骨粉のような高タンパクの飼料を牛に与えると、妊娠中の牛でもお乳を出すようになります。搾乳量が大幅にアップするわけです。
このことが、市販の牛乳をさらに“各種ホルモン濃縮白濁液”にしてしまいます。それは、1979年に報告された、バブラハム研究所(イギリス)のヒープとハモンが行った研究結果を見れば一目瞭然です。というのも、妊娠していない牛では、牛乳中に含まれるエストロゲンが1ml当たり30pg(ピコグラム)であるのに対し、妊娠41~60日には151pg、妊娠220~240日には1,000pgにも達するというのです。私たち人間がこの牛乳を飲むと、体内でエストロゲン様の作用を示します。
こんな異常な牛乳を飲み始めたのは、ごく最近のことです。ところがこれが、乳がんや卵巣がん、前立腺がんといった生殖器系のがんの増加につながってしまっているのです。
草を食べていた牛に肉骨粉の配合飼料を与えた結果、本当にとんでもない事態に陥っていることがよく分かるでしょう。感染症や乳腺炎などの病気が、家畜の中でも牛には特に多くみられるという話を聞いたことがありますが、これにもきっと関係しているはずです。さらには、先日の犬のがんに関する話も同じです。「喜んで飲むから」と牛乳を与え、そして不自然なペットフードを与えるから、4分の1ががんで死亡することになる・・・。どんな生物であれ、細胞レベルで営まれている生命の精緻な仕組みには、全て「食性」が深く関与しています。それなのに、その深い意味を知らない愚かな人間たちが、数々の重大な罪を犯してしまっているのです。
今からでも、私たち一人一人が、もっと賢くならなければなりません。
(山田豊文氏の記事より抜粋)
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