無垢なる字 感じて ダウン症の書家 金沢さん個展
2014年9月24日
中庭からも望める作品を背に「菩薩(ぼさつ)のようだ」と金沢さんの頭をなでる新倉住職=足立区で |
NHK大河ドラマ「平清盛」(2012年)の題字も手掛けて活躍するダウン症の書道家、金沢翔子(しょうこ)さん(29)=大田区=の書展が、足立区梅田1の善立寺(ぜんりゅうじ)で開かれている。金沢さんがまだ無名時代から、その書と純真無垢(むく)な人柄にほれ込んだ新倉典生(にいくらてんしょう)住職(50)の企画で、寺では8年半ぶり2回目の個展だ。 (丹治早智子)
彼岸の中日。墓参に訪れた人々が、幅三メートル近くある屏風(びょうぶ)の前でくぎ付けになった。まるで踊るように力強く書かれた「佛法僧(ぶっぽうそう)」の文字。
金沢さんは二十歳のとき、善立寺も含めて都内で三回の個展を開いた。「翔子にとっては、ここは第二の故郷みたいなもの」と話すのは、母で書道家の泰子(やすこ)さん(70)。夫は五十二歳で病死し、生まれつき障害がある娘を書家として育て上げた。
新倉住職との出会いは十数年前。金沢母娘が所属する書道の流派「柳田流」の始祖、初代柳田正齋(せいさい)の墓誌が同寺にあったことが縁という。
翔子さんが二十歳のとき、泰子さんが銀座で初めて開いた娘の個展。「名もない小娘の個展。周囲からは無謀だと止められましたが、将来、必ず一人残ってしまう翔子のため、何か書家として証しになるものをのこしてあげたかった」。当時の心境をそう振り返る。
この個展を見た新倉住職が、翔子さんの書に一目ぼれ。自分の寺での書展を申し出た。それから八年半。翔子さんは全国各地で個展を開くまで成長した。昨年は東京国体開会式で「夢」という字を揮毫(きごう)した。
そんな活躍を新倉住職はわが子のことのように喜ぶ。「法華経に無垢清浄光(むくしょうじょうこう)という言葉があります。無色透明の光は無垢でないと照らせない。おごりやねたみを持たないダウン症の翔子さんそのもの」と新倉住職。「彼女の作品から多くのことを感じてほしい」と話す。
書展は二十八日まで。午前十時~午後四時で観覧自由。大河ドラマの題字にもなった「平清盛」や「平和の祈り」など約二十点を展示。二十七日午後三時すぎ、翔子さんも来場予定。問い合わせは善立寺=電03(3886)1367=へ。
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