2011.4.5 TUE
成功に必要なのは「才能」より「意志力」、という研究結果
TEXT BY JONAH LEHRER
TRANSLATION BY TOMOKO TAKAHASHI/GALILEO
WIRED NEWS (US)
論文を執筆した心理学者チームは、計画的に訓練できる子どもたちの持つ特性に関心を向けた。研究には、何千時間もの訓練を要する綴り字の競技会『Scripps National Spelling Bee』に参加した子どもたち190人のデータが用いられた。
データを分析した結果、論文執筆者の1人でペンシルベニア大学の心理学者Angela Duckworth氏は、「grit」(気骨、意志力)と呼ばれる心理学特性が重要であることを発見した。Duckworth氏は過去の研究において、人間の意志力の程度は、手短なアンケートを通じて、熱意の継続性(質問例:「何かのアイディアやプロジェクトに熱中したが、短時間で興味を失ったことがある」)と努力の継続性(質問例:「挫折によってやる気を失うタイプではない」)を5点満点で評価することにより、かなり正確に測定できることを明らかにしている。
予想どおり、意志力のある人ほど、自分の目標を一途に追いかけ、特定の活動に熱中する傾向を示しており、また苦労や失敗に遭遇しても、あきらめずにやり通す傾向も強いようだ。
綴り字大会の参加者のうち、意志力のある子どもほど、そうでない子どもに比べて計画的訓練に取り組んでいた。予想された意志力と綴り字の成績との関連は、何時間もの計画的訓練によって完全に媒介されていた。
われわれは通常、最良のパフォーマンスを発揮させるテストによって才能を測る。例えば、NFLのスカウティング・コンバイン[ドラフト候補選手たちが集められ、各種テストを行なうもの]がそうだ。選手たちは短時間で一気に能力を発揮するテスト(40ヤードダッシュ、短いIQテスト、キャッチドリルなど)を、モチヴェーションが高い状態で行なう。
しかし、こうしたテストの問題点は、現実はスカウティング・コンバインとは違うという点だ。
現実の成功は、継続してパフォーマンスを発揮することや、きつい練習に励み、週末にプレーブックや試合のビデオを何時間も研究できるかどうかにかかっている。これらはすべて、計画的訓練に相当するものであり、そうした有用な訓練にいそしむ能力の有無は、その人が持っている意志力の程度に左右される部分が大きい。
ここでの問題は当然、意志力という性質が、たった1日で、たった1つの場所で計測できるものではないことだ(この人格特性の評価には、むろん長い時間を要する)。
その結果、才能に関して間違った信念をもつわれわれは、間違ったテストによって才能を測ってしまう。「コンバインでのテスト結果とプロフットボール選手の成績との間に統計的に有意な相関が認められ」ない理由は、おそらくこの辺りにあるのだろう。
上述の研究はまた、意志力や自制といった「非認知的」スキルに対する認識の高まりを示している。これらの特性は、知能とはほとんど、または何の関係もないが、人生の成功における個人差を説明する上で、大きな要素であることが多い。意志力などの要素はしばしば、現実の成功を予測する最も優れた因子となっている
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