参考。昨夜楽しむ。
2010.11.25の記事
オリビア・ニュートン=ジョン @ Bunkamura オーチャードホール
pic by ほりたよしか
活動40周年を迎え、ファンの投票によって選曲されたベスト盤など様々なリリースが相次いでいる、英国生まれの世界の歌姫、オリビア・ニュートン=ジョンのジャパン・ツアー。今回は東京・金沢・名古屋・大阪でのステージが予定されており、ツアー初日オーチャードホール公演をさっそくレポートさせて頂く。なお、以下は公演内容のネタバレを含むものなので、今後のステージに出掛ける予定の方は、どうぞご注意下さい。
さて、開演時間を迎えると、ステージ後方に設置されたスクリーンには幼少時代から現在に至るまでのオリビアの姿を追う、写真や動画が次々に映し出される。今更言うまでもないことだが、なにしろ可憐で愛らしいのである。ジョン・トラボルタと共演したミュージカル映画『グリース』のカットなども披露されていた。そしてステージ上にはドラマー、ギタリスト、ベーシスト、キーボード奏者、男女コーラス各1名、それにサックスやフルートなどのウインド・パートとコーラスも兼任する男性が1名といったバンド・メンバーが登場。ステージ袖からオリビアの歌声が響き渡るというところで、満場の拍手が巻き起こっていた。姿を見せた彼女は、ブロンドの髪が映えるエレガントな黒いドレスを身に纏っている。
伸びやかだが嫌味のない、ナチュラルでビブラートの効いた歌声が、1975年にビルボード1位を記録した“そよ風の誘惑”を皮切りにホールを満たしてゆく。ファンキーなR&Bや、スウィングするポップ・ナンバーなど、バラエティ豊かな選曲の中で彼女の足も徐々に軽快にステップを踏み始めていった。これが本当に、還暦を越えた人の歌声と姿なんだろうか? 「ドーモアリガトウゴザイマス! ハロー、トーキョー!」と最高にチャーミングな笑顔で挨拶する。客席から「I’m really love you,OLIVIA!!」の声が飛ぶと、即座に「あら、ウチの旦那がいるみたいね」と切り返して笑いを誘っていた。
「昔、ジーン・ケリーと踊った曲よ。ヒア・ウィー・ゴー!」と、今度はカラフルな照明の中でダンサブルなタイトル曲(ソフトバンクのCMでも使われていたっけ)など、映画『ザナドゥ』からの楽曲群を立て続けに繰り出してゆく。メロディは派手ではないがグルーヴィな名曲“マジック”がかっこいい。ギタリストの肩に手を置いたり、男性コーラスとのデュエットで手を取り合ってダンスしたりと、バンドとしてのパフォーマンスを目一杯楽しんでいる様子だ。「カントリー・ソングは好き? 1971年にアメリカで初めてヒットした曲なの。一緒に歌ってね」と、ステージ中央にバンド・メンバーが集まってボブ・ディラン作の“イフ・ノット・フォー・ユー”からは一転、カントリー・ポップのメドレーが。カントリー、R&B、ディスコ・ポップにバラードと、ジャンル的にボーダレスな楽曲の数々も、彼女の長いキャリアでの人気を支えて続けてきた証明のようなものだ。
椅子に腰掛けたまま、ボッサ風のクリスピーなフックが愛らしい“たそがれの恋”(個人的に嬉しい選曲)が披露されると、そのままムーディーでかっこいいアレンジの“フィジカル”がプレイされ始めたのだが、「やっぱりこれ、立って歌わないとダメじゃない!?」とオーディエンスの喝采を誘いながら演奏中断。本来の力強いダンス・チューンのアレンジで仕切り直してしまう。うまい。懐メロ人気曲であることを逆手に取った、心憎い演出だ。熱いギター・ソロに合わせてぴょんぴょんと飛び跳ねてしまうオリビアがステキ過ぎる。更には一輪の花を振りかざしながら情熱的なラテン・ファンク・チューン“ノット・ゴナ・ギヴ・イン・トゥ・イット”、そしてオリビアがイルカの群れと戯れる美しい映像がスクリーンに映し出される中での“ザ・プロミス(ドルフィン・ソング)”と、彼女の人生における様々な瞬間を切り取った楽曲たちが続く。
ドレス姿からカウガールへと衣装チェンジ(でも一貫して黒を基調にしているのがかっこいい)したオリビアは、ジョン・デンバーの“カントリー・ロード”をカバーする。いや、“カントリー・ロード”と言えばオリビアのバージョン、という印象を持つ人も、少なくないのではないだろうか。そして“噂”からスタートするロック・メドレーへ。彼女が羽織っていたウェスタン・ジャケットを脱ぐと、セクシーでアクティブなキャミソール姿になる。それでも嫌らしさが皆無でヘルシーに見えてしまうのは、もうこれは彼女の「徳」としか説明がつかない。
そして、いよいよのクライマックスは『グリース』からのナンバーで盛り上がる。ドタバタ恋愛ミュージカルを再現する、男性コーラスとの言い争うようなデュエットがいい。“想い出のサマー・ナイツ”ではスクリーンに歌詞が映し出されシンガロングを求めるのだが、これ、みんなで歌うには正直、ちょっと敷居が高いだろう。楽しいからいいけど。メドレーで披露されたそれぞれの楽曲やアンコールの2曲まで含めると、実に30曲を数えるというエネルギッシュで濃密な2時間。スクリーンを使ったシンプルな演出はあったけれど、基本的には「最高のバンドと一緒に、自分が最高の歌を歌えれば、最高のステージになる」とでも言うような、オリビアのパフォーマーとしての根幹を支える、ミもフタもないほどあっけらかんとした志だけで成立したショウであった。自然体なのによく考えてみれば驚異的なパフォーマンスで、あっという間に夢見心地な気持ちにさせられてしまう。そりゃあ世界で40年、愛されるわ。(小池宏和)
セット・リスト
1:Olivia Walk On (Honestly)
2:Have You Never Been Mellow
3:A Little More Love
4:Sam
5:Xanadu
6:Magic
7:Suddenly
8:Country Medley
[If Not For You~Let Me Be There
~Please Mr. Please~Jolene~If You Love Me (Let Ne Know)]
9:Don't Stop Believin'
10:Physical
11:Help Me Heal
12:Not Gonna Give In To It
13:The Promise (Dolphin Song)
14:Soul Kiss
15:Take Me Home,Country Roads
16:Rock Medley
[The Rumour~Make A Move~Totally Hot~Deeper Than The Night~Twist Of Fate]
17:One That I Want
18:Hopelessly Devoted
19:Summer Night
20:We Go Together
EN-1:Grace And Gratitude
EN-2:I Honestly Love You