「思想犯」の復活 国会前、大量逮捕
警察は狙いをつけると総がかりで襲いかかり、身柄を確保していった。=16日夜、国会正門前 写真:筆者=
『市民で埋め尽くされた国会前の車道』。空撮映像は安保反対の人々が圧倒的多数であることを示す証拠として国内外の世論を揺さぶった。
これがアベシンゾーの逆鱗に触れたのだろう。意を汲んだ警察庁出身の杉田和博官房副長官が、警視庁に規制の徹底を指示した。
苛烈を極めたのが16日の夜だった。「そいつを捕まえろ」。警察は次から次へと参加者を逮捕していった。わずか数時間で計13人が身柄を拘束されたのだ。
都心の所轄署に分散留置されていた13人は、きょう午後までに全員釈放された。
釈放されること自体は喜ばしいことだが、警察は起訴できない人を13人も逮捕したのである。
見込みで逮捕するのだから恐ろしい。13人すべての逮捕容疑が公務執行妨害というのが、いかにも だ。
取り押さえられた男性は背中がむき出しになっていた。=16日夜、国会正門前 写真:筆者=
田中は当時のもようを機動隊のすぐそばで見ていた。警察に突き飛ばされたりしながらも一部始終をカメラに収めた。
警察はデモ参加者を機動隊のうずの中に引きずり出して逮捕していった。ボコボコと音がするのは殴る蹴るの暴行を加えているのだろう。
気を失っているのか。伸びたままの状態で両足を引っ張られ護送車まで連行されていく若者もいた。
弁護士が品川署で接見した男性は目の周りにアザがあり腕にスリ傷があった、という。
高輪署に勾留されていた男性は、ステージのすぐそばで有名人の発言に耳を傾けていたところ、「確保」という怒鳴り声と共に後ろから警察官に抱きつかれ逮捕となった。
男性は「何が起きたのか分からなかった」と話す。
救援に入った弁護士は「公安警察があいつを捕まえろと以前から狙っていた可能性があった」と見る。
とにかく手当たりしだい逮捕していったのである。「警察に体が触れていないのにもかかわらず逮捕された人が複数いる」と弁護士は話す。
足から持って行かれる逮捕者。警察はなりふり構わなかった。=16日夜、国会正門前 写真:筆者=
取調べで警察は逮捕容疑とは全く関係のない脅しやスカシで揺さぶってきた。
中央署に勾留されていた男性は、刑事に「政治活動をやめろ。まともな生活に戻るんだ。将来どうなるか分からないぞ」と脅された。
久松署に留置されていた男性は、耳を疑いたくなるようなことを刑事に言われた。
「ここには殺人(犯)もいる。強姦(犯)もいる。思想犯ばかりじゃないからね」と。
男性は「思想犯と言いましたね?」と刑事に質した。刑事は「暴力につながる思想が問題だ」と突っぱねた。まるで戦前の特高警察ではないか。
検察が勾留請求できなかったために男性は逮捕から2日目で釈放された。にもかかわらず警察は彼を思想犯扱いにしたのである。
政府の方針に反対するデモ参加者は思想犯扱いし、手あたり次第に逮捕する。それが当たり前の時代に入ったのだろうか。
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