街の弁護士日記 SINCE1992at名古屋
どこまでもマチベンのブログ by岩月浩二@守山法律事務所(名古屋市)
2015年10月14日 (水)
マイナンバー 通知カードを受け取ると義務が発生します
『マイナンバー』は政府筋が実体とは不似合いな命名をしたもので、不適切である。
以下、法律通り、特定個人識別番号、ないし個人番号と呼ぶ。
特定個人識別番号法のうたい文句は、行政の効率化、負担と給付の公正、そして国民の負担軽減及び利便性の向上である(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第1条)。
個人番号法では、国民一般には何の義務づけもしていない。
負担軽減を謳う法律が、国民に負担を押しつけるのでは筋違いであるから当然である。
したがって、個人番号通知カードを受け取る義務がないことはむろんである。
したがって、不在中に届いていれば、取りに行かなくてもよいし、受取拒絶もできる。
受け取らないという選択が賢明かであるが、将来どうしても個人番号が必要になったときには、個人番号の記載のある住民票を取り寄せればよいだけのことであることは、取手市役所が周知してくれた。
受け取らないことによる不利益は何もない。
一方で、個人番号通知カードを受け取ってしまうと、次のような義務が発生する。
紛失したときは、直ちに役場に届け出をしなければならない。(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律7条6項)
移転転入手続には、個人番号通知カードを提示しなければならない。(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律7条4項)
通知カードに記載された事項に変更がある場合は、14日以内に役場に届け出なければならない。(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律7条5項)
テレビを見ていると、自分の番号の管理は自己責任であるかのような解説もある。
勝手に番号を割り振っておいて、国民に管理責任を負わせるかのような話は、そもそも国民の負担軽減を趣旨とする「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」の精神に反している。
前記した規定の違反には、制裁規定こそないが、通知カードを受け取ると、義務が生じる構造になっているのであるから受け取らないに越したことはない。
行政は勝手に個人番号を付して、勝手に個人番号を活用するというのであるから、行政が自分で個人番号を確認すればよいだけの話であって、国民がわざわざ行政のお手伝いをしなければならない筋はない。
通知カードを受け取らない人が多いと、行政事務が増えるかもしれないが、特定個人識別番号導入で、確実に行政の事務は増える。
行政の事務が増えることを行政が自分からしようとしているのであるから、国民がこれに協力しなければならない筋合いはないのである。
http://moriyama-law.cocolog-nifty.com/machiben/2015/10/post-ed2e.html
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