壁に当たる放射能除去 福島の除染、国の当初計画は破綻
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放射性物質が降り注いだ福島県内の除染作業。汚れた土や草木などを保管する中間貯蔵施設の検討はようやく進み始めたが、どこにどんな建物をつくるか姿が見えないままだ。「ふるさとに戻るためになくてはならない施設だが、復興の妨げにもなる」。住民らは、施設建設と除染の行方を複雑な思いで見守っている。
集中復興5年折り返し■中間貯蔵施設、住民ジレンマ
環境省が中間貯蔵施設の候補地としているのは、東京電力福島第一原発の事故により住民のほぼ全員が避難している双葉、大熊、楢葉の3町。大熊、楢葉の2町では、候補地を選ぶためのボーリングなど現地調査が春以降に始まった。
5月にボーリング調査が始まった大熊町は、人口の96%が住んでいた地域が、放射線量が極めて高い「帰還困難区域」に入る。6カ所の建設候補地がある。
環境省は建設計画を9月中に町へ示し、政府は補償の対象世帯や周辺の緩衝地域がどうなるかなどを具体的に提示する見通しとなっている。渡辺利綱町長は「町民の意向を踏まえ、議会と協議して、町の考えをまとめたい。最終的には県が判断することになる」と、県や他の2町の意向も踏まえて受け入れの可否を判断する考えだ。
7月にボーリング調査が始まった楢葉町では、住民の反発はより強い。
福島第一原発が立地し、町の大半が帰還困難区域の大熊、双葉町と異なり、楢葉町は放射線量が比較的低く、ほとんどが近い将来に帰還が望める「避難指示解除準備区域」だからだ。
県と町は「調査受け入れと設置受け入れは別」という立場を明確にしている。町は、近隣のいわき市と広野町で出た除染廃棄物の搬入はしないなどの「保管庫」であれば、との条件で調査を受け入れた。しかし、避難先として町民の8割を受け入れているいわき市の反発も招いている。
環境省側は「造る施設は同じ」だとして調査を進める。しかし、町の担当者は「あくまで保管庫であるべきだ。施設の具体像、特に搬入量の規模を見極めながら、候補地となった他の町や県と協議していきたい」との姿勢を崩していない。
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