川端康成の自宅に恋人への手紙
ノーベル文学賞を受賞した文豪、川端康成が学生のころに恋人に宛てた手紙が、神奈川県の自宅に保管されていたことが分かりました。
この恋人との思い出は初期の主な作品の題材になっていて、研究者は川端文学の原点を知る重要な資料として注目しています。
保管されていたのは、大正10年、学生だった川端康成が文壇デビューした年に伊藤初代という女性に宛てた手紙1通と、初代から川端が受け取った手紙10通で、川端が晩年まで暮らした神奈川県鎌倉市の自宅にありました。
初代は川端の7歳年下で初恋の人といわれ、川端が22歳のときに一度は結婚を誓いあった仲ですが、初代の側から婚約を破棄したことで2人の恋が終わり、その理由は今でも明らかになっていません。
これらの初代との思い出は「南方の火」や「篝火(かがりび)」といった川端の初期の作品の題材になったほか、映画化された作品「伊豆の踊子」にも影響を与えたとされています。
今回見つかった川端の手紙は、婚約したあとに突然、連絡が取れなくなった初代を心配する内容で「毎日、毎日、心配で心配で寝られない」とか「恋しくって恋しくって早く會わないと僕は何も手につかない」など、およそ600文字の飾らない文章がつづられています。
しかし手紙には日付が入っておらず、川端が書いたものの何らかの理由で投函されずに手元に残っていたと考えられています。
一方、初代からの手紙は川端を慕う思いが切々とつづられています。
手紙の存在は川端の作品を通じて一部が知られていましたが、全文が明らかになるのは初めてです。
川端康成学会の常任理事の森本穫さんは「初代との恋とその終わりは川端文学の原点ともいえる体験で、その詳しい経緯を知るうえでも重要な資料だ」と話しています。
これらの手紙の一部は、今月16日から岡山市で始まる川端康成ゆかりの美術品の展覧会で公開されます。
07月08日 13時10分
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