Inner Voices: ちもり(千百里)
「正しいことは、言うておかないかん。」
最も強烈な、Inner Voice は、これだろう。
朝日新聞がなし得た、最大のスクープである。
「関電、歴代首相7人に年2千万円献金 元副社長が証言:」
内藤千百里(ちもり)氏は、関西電力の元副社長であり、91歳になって、これも、いわば遺言であろう、良識、良心の発露を行った。
これだけ痛烈な自己批判は、過去に例がない。
全盛期の原子力発電の中枢を担った、本人の経験談であるゆえに、誰も否定も出来ないし、電気料金がこのように使われて来た実証言は、モンスターシステムの存在を強固に裏付ける。政権が、正当に、妥当に、合理的に動作するはずもない。モンスターシステムにとっては、首相などただのパーツだ。
現在の関電八木誠社長は、1974年以降は、このようなことは行っていないと証言している。つまり、現役社長も、否定できない。受け取った中曽根側(7人中の唯一の生存者)も、本人が高齢で記憶が定かでないため、確認できないとしている。つまり、受け取り側も否定できない。
このようなケース(賄賂を贈った側の本人サイドが、実証)は、極めて稀だろう。どのような情動か。(氏は69時間の取材に応じている。)
東京電力福島第一原発の事故について
「政府の対応はけしからん」とし、
「長年築いてきた政・官・電力の関係に問題があった」
と指摘した上、多額の政治献金を電気料金で賄ってきた関電の歴史を詳細に語った。
直接渡した相手は、内藤氏が献金したと証言した7人は、
田中角栄、三木武夫、福田赳夫、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘、竹下登の各元首相(中曽根氏以外は故人)。
多額の政治献金を全額【電気料金で賄ってきた】関電の歴史を詳細に語った。
献金の理由は
「一に電力の安泰。二に国家の繁栄」とし、
「天下国家のために渡すカネで、具体的な目的があったわけではない。
許認可権を握られている電力会社にとって権力に対する一つの立ち居振る舞いだった。漢方薬のように時間をかけて効果が出ることを期待していた」
としている。
政権が電力会社に対し、本来あるべき、正当、合理的な対応をすることは、これでは全く不可能だろう。
もちろん今でも、政治家に対する支援はパーティ券購入(アベシ最大)、自社株式保有(イシバシ最大)、政治献金、選挙資金の提供、落選時の就職先の手当など手厚く行われている。(原発ホワイトアウトには、仕組みが詳述されている。)
内藤千百里氏は電力業界に誤りはないと信じてきたが、原発事故で過信だったと気づいた。関電にとって目指すべきモデルで超えるべき対象だった東電の事故は、彼の価値観を画期的に変えたのだろう。
電力を各地域の独占企業が担い続けていいのか。
この告白は業界への戒めであり、世論への問いかけだ。
「
関西電力で政界工作を長年担った内藤千百里(ちもり)・元副社長(91)が朝日新聞の取材に応じ、少なくとも1972年から18年間、在任中の歴代首相7人に「盆暮れに1千万円ずつ献金してきた」と証言した。政界全体に配った資金は年間数億円に上ったという。原発政策の推進や電力会社の発展が目的で、「原資はすべて電気料金だった」と語った。多額の電力マネーを政権中枢に流し込んできた歴史を当事者が実名で明らかにした。
」
”関電、歴代首相7人に年2千万円献金 元副社長が証言:朝日新聞デジタル”
http://www.asahi.com/articles/ASG7N029QG7MUUPI00B.html
「オーラルヒストリー」第一人者の御厨貴東大客員教授の話:
電力を独占供給する巨大公益企業の政界工作を中枢の元役員が明かした衝撃の告白だ。【これほど痛烈な自己批判は過去にない】。歴史をこの国に記録として残そうとする勇気ある行為だ。
千里の道も一歩からという。
この ちもり(千百里)氏の、内部告白は、その千里を突き抜けている。
【写真】” 歴史上、最も痛烈な自己批判" を報道する、古館伊知郎キャスタ。
これも、「懐かしい風景」になってしまうのだろうか。
「もうとにかく口にさるぐつわした状態で10年たったわけです」
「AERA」(朝日新聞出版)インタビュー冒頭。
千百里(ちもり)は、最高の代弁者だったはずだ。
コメント
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