労働力不足を補う流入難民、ドイツ
2015年09月02日 11:47 発信地:ボビンゲン/ドイツ
【9月2日 AFP】ドイツで自動車修理工場を経営するローベルト・メンホッファー(Robert Menhofer)さん(59)は、シリア難民のジョルジュ・ロマノス(George Romanos)さん(21)を研修生として雇い、その働きぶりを称賛している。ドイツでは、メンホッファーさんのように若い難民にチャンスを与えようとする経営者が増えている。「彼は腕のいい整備士になるだろう」とメンホッファーさんはいう。「技術面においては申し分ない」
「けれど理論面では……言葉のせいで問題もある」と、青いつなぎの作業服を着たロマノスさん本人が、控えめに言葉を挟んだ。そのドイツ語は、ドイツに来て初めて学び始めたものだ。
シリア人でキリスト教徒のロマノスさんは、2013年の春にドイツ南部のバイエルン(Bavaria)州に一人でたどり着いた。その過酷な道のりについて、彼は語りたがらない。
彼のように内戦を逃れてドイツにやって来たシリア難民は13年初頭以降、8万6000人近くに上る。シリアだけではない。この期間、コソボやアルバニア、他の国・地域からも、欧州一の経済大国が受け入れた難民は計18万人近い。
難民は快く受け入れられるとは限らない。特にドイツ東部では難民保護施設に対し、醜悪な反対デモが行われている。だが難民たちは、若い労働力を探すのに必死になっている企業からますます求められている存在でもある。少子高齢化が進むドイツでは、特に肉体労働や熟練技能を要する仕事で需要が高まっている。産業界からは、難民を労働市場に参入させやすいよう法律の改定を求める声も増えている。
バイエルン州の州都ミュンヘン(Munich)から北へ70キロほどの位置にある街アウクスブルク(Augsburg)では、職工協会がもう何年もそうした法改正を求める運動を続けている。アウクスブルクの6月の失業率は4.2%だった。人材が見つかっていない求人が5000件ある。そして、ここでも訓練生の人材不足は深刻だ。
理論的学習と職場内訓練(OJT)を組み合わせるドイツの二重訓練制度は、十分な数の若者を引きつけなくなっている。昨年は、8万人分もの研修生枠が空席のままだった。
「今では皆、大学へ進学したがるんだ」とメンホッファーさんはいう。だから、ボビンゲン(Bobingen)の難民保護施設に住むロマノスさんに出会い、「車が大好きだ」と聞いたとき、メンホッファーさんはそのチャンスに飛びついた。メンホッファーさんは地元の業界団体の代表として、難民保護施設の住民たちが開催するクリスマス市の支援を頼まれ、ロマノスさんと知り合った。
■産業界の需要、地域との連携
ロマノスさんは昨年9月から、整備工場での勤務の合間に語学学校にも通っている。メンホッファーさんは弟子の進歩に満足し、笑顔を浮かべる一方で、ロマノスさんと同年代のドイツの若者たちを「怠慢」だと表現する。
しかし、アウクスブルクで異文化間就職アドバイザーを務めるサイト・デミル(Sait Demir)さんは、正式な手続きに対処せざるを得ない。ロマノスさんの場合、難民申請がまだ受理されていないため、状況がさらに複雑だという。ロマノスさんに現在下りているのは、2年間だけの一時滞在許可だ。月給は675ユーロ(約9万円)。小さな部屋を借りていて、家賃は地元の労働局が払っている。
デミルさんは労働局や慈善団体と緊密に連携し、今年1月以降、19人の難民を研修生として就職させてきたが「もっと多くできるはずだ」と語る。アウクスブルクの職工協会の研修担当者、フォルカー・ツィンマーマン(Volker Zimmermann)さんによれば、経営者たちは学ぶ意欲があって勤勉な人たちを雇用できる可能性に気付き始めているが、役所での複雑な手続きが壁になっている。その上、難民申請が受理されるまでは、24時間前までの通告でいつでも国外退去させられる可能性が残る。
しかし、この2年で状況はだいぶ変わったとデミルさんはいう。ドイツの閣僚2人は最近、国内紙への寄稿で、新たに到着する難民は「我々が必要としている労働力」とみなすべきだと述べた。
これまで亡命希望者は、ドイツに到着してから9か月間、働くことが許されなかった。だが昨年11月、この期間は3か月に短縮された。今年1月以来、連邦当局は6000万人以上の難民に労働許可を発行している。 (c)AFP/Mathilde RICHTER
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