■電解水を噴霧しての除染実験でも驚きの結果
加藤鉄工株式会社での除染結果
2012年9月には、福島県福島市の福島工業団地内の加藤鉄工株式会社の敷地で、電解水を噴霧しての除染実験が行われ、地上33カ所が計測された。作業前に最も高かった場所は、毎時7.52マイクロシーベルトであった。それが作業後の2013年11月には、毎時0.37マイクロシーベルトまで下がっている。また噴霧から約3年後になる2015年8月には0.18マイクロシーベルトまでさらに下がっている。これは現在の大阪辺りと同じくらい低い値だ。その後、加藤鉄工には行政による除染作業が行われたが、その時の事前のモニタリングで、「なぜここ(特殊な電解水を散布した場所)だけ、こんなに濃度が低いんだ」と担当者は不思議がったという。
2013年10月には、福島県伊達市の北部日本自動車学校で、同様の実験が行われた。13カ所の計測で、最も高かった毎時2.40マイクロシーベルトだった場所が、作業後には0.83マイクロシーベルトに下がっている。計測を行ったのは、独立行政法人「日本原子力研究機関機構」だ。
動画は、「高エネルギー水素水」を使った放射線除染の記録
■従来の除染との革新的な差 各大学も注目
従来の水で洗い流す「除染」では、水が放射能汚染されるので、水をさらに処理する必要がある。また、作業中に汚染水が飛散してしまうこともある。しかし、この電解水を噴霧する方法に、さらなる作業は必要ない。その点だけでも、極めて画期的と言えるのではないだろうか。
現在、宮本氏の研究には、広島大学、奥羽大学、東北大学を含む複数の大学研究者が関心を寄せている。奥羽大学の研究者は、飼い猫にその電解水を飲ませてみると、19歳と高齢でよだれを垂らしているような状態だった猫が、尻尾をピーンと立てて部屋中を歩き回るようになったと言うし、広島大学と共同で行われた「鶏に特殊な電解水を飲ませる実験」では「特殊な電解水は、水道水に比べて、体内からの放射性物質排出促進効果が高い」という実験結果も出ている。さらに、東北大学では原子核工学出身の学者が関心を寄せているという。
厚生労働省が報告した電解水の水質検査では、環境や人体に影響がない水であることが明らかになっている
■これからの除染研究に大切なこと
原子力や物理学の研究者にとって、データに示された「放射能が消えている」という事実はそう簡単に受け入れられるものではない。だが、「自然環境を壊さずに、簡単な方法で除染をしたい」という目的は科学者も宮本氏も同じだ。これからの森林や山の除染に最適な方法について、常識に縛られすぎない研究が求められる時代にきているといえるだろう。
福島第一原発では、今も1日約300トンの汚染水が発生し、貯蔵タンクは約1,000基にまで至っている。「放射能が消えるメカニズム」が解明されれば、汚染水や、日本や世界中にもある放射性廃棄物の問題の解決にもつながるかもしれない。日本、そして世界に少しでも安全で綺麗な土地が増えることを願って、今日も宮本氏は実験を続けている。
(取材・文=深笛義也)
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