東京電力福島第1原発の廃炉費用の確保や計上方法について、経済産業省が検討している枠組みの全容が判明した。東京電力ホールディングス(HD)が費用の一括計上で債務超過に陥らないよう、会計ルールを改正し、分割して計上することを認める。費用の確保策は、東電が国の管理下で資金を積み立てる制度の創設のほか、電力小売りに参入した新電力を含めた電力会社が送電線を利用する際の利用料「託送料金」に上乗せする案も検討する。【宮川裕章、和田憲二、大久保渉】
経産省が8日、原子力問題に関する自民党の合同会議で示した。ただ、新電力に負担を求める案には党内から異論も出ており、意見集約は難航しそうだ。
福島第1原発の廃炉費用は、東電が2兆円を工面する計画だが、数兆円単位で不足する公算が大きい。経産省は年末までに見積額を出す方針。企業の会計ルールでは、費用発生が判明すれば速やかに計上する必要がある。東電も、不明だった廃炉費が明示されると負債に一括計上しなければならず、債務超過に陥る可能性が高い。広瀬直己社長は10月、債務超過を回避できるよう政府に対応を求めていた。
経産省が示した枠組みでは、電力会社の会計ルールを定めた「電気事業会計規則」を改正し、福島第1原発の廃炉費用を期間を定めて分割計上できるようにする方針。期間は今後協議する。ただ、確実に費用を確保できる裏付けがなければ安易に分割計上は認められないため、積立金制度創設などを検討する。
積立金制度は、東電HDがコスト削減など経営努力で捻出した資金を国の「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に積み立て、機構が必要に応じて支出する仕組み。機構が廃炉の工程を管理するなど関与を強め、資金を安定的に確保する。
2020年には、新電力が送配電設備を使いやすくなるよう、大手電力に送配電部門の分社化が義務付けられるが、東電の送配電子会社が想定より利益を上げても、託送料金引き下げは認めず、廃炉費用に優先的に回させる。経産省は「福島第1原発の廃炉費用は東電が負担することが原則」としている。
だが、8日の会議では、費用を託送料金に上乗せする案も示された。経産省は「東電の経営努力頼みの積立金制度より確実に費用を回収できる」(幹部)と説明するが、大手電力だけでなく新電力も負担を求められる。会議では「廃炉費用は原発を持つ電力会社が負担するのが当然」など反発の声が出た。
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