昨日、父親と話していて、当時の大卒の初任給がいくらだったかを聞きました。1万5千円だったそうです。私の初任給が20万円。そして来年就職する息子の初任給も20万円。30年経って全く同じです。あり得ないと思いませんか?
そうです。日本という国はこの30年間、全くあり得ない「失政」を続けてきたのです。確かにこの20年、全く経済成長がなかったのは事実です。しかし、それが原因なのではなく、根本の原因は他にあります。
それは「プラザ合意」です。今から31年前、1985年のプラザ合意で、それまで200円以上だったドル円為替レートが一時は70円台まで円高になりました。それは輸出一辺倒の経済から内需拡大型の経済への転換を促す明確なメッセージでした。しかし、日本はバブルの三年間だけ、金融緩和による内需拡大を行ったものの、その副作用として、銀行が「実体価値を全く作り出さない土地担保融資(土地の売買は単なる所有権の移転に過ぎないから)」によるバブルを生み出し、それが弾けて経済が悪化した結果、結局過去の成功体験にしがみつき、輸出主体の経済に戻ったせいで、それからさらに30年間黒字を稼ぎ続けました。
その結果、日本は世界一のお金持ち国になったのですが、そのことすらほとんどの国民は知りません。政府の借金のことばかり喧伝されるからです。しかし、日本の政府の借金の9割以上は日本人が貸しており、これは国内の貸し借りに過ぎず、海外から見れば日本国内でチャラです。国際的に見れば、日本は300兆円以上という世界最大の対外純資産を持っている世界一のお金持ち国なのです。ちなみに対外純資産とは、対外資産(海外への投資)から対外債務(海外からの投資)を差し引いたネット資産のことで、これが世界最大であることは財務省のホームページでも確認できます。
つまり、国際的に見て最大の債権国であり、世界一のお金持ち国なのにも関わらず、その実感をほとんどの人が持たず、それどころか300万人以上の子どもたちが貧困状態にある。何故こんなバカなことになっているのか?
それは、その黒字をほとんどの日本人が受け取れないからです。何故なら、黒字は外貨で貯まり、日本には入って来ないからです。国際決済は基本的に外貨で行われ、輸入の代金も外貨で払い、輸出の代金も外貨で受け取るため、黒字も差し引き外貨で貯まります。したがって、世界一のお金持ち国と言っても、それは実際は約3兆ドルの外貨資産であって、外貨は日本では使えず、運用もできないため、全て海外に貸しっ放しになります。運用益も全て外貨で上がりますから、それもまた海外に再投資され、日本人は使えません。
中でも日本の政府がアメリカの政府に貸している約1兆ドル(100兆円以上)は、世界中で破壊行為を繰り返すアメリカの軍事費を賄い、それは本質的に生産活動ではありませんから、いくら金利で額が増えても、それで実体価値を壊しているのであれば、裏付けのないバブルにしか過ぎず、いずれドルが紙くずになるのは時間の問題です。しかも、アメリカに貸しているのは日本だけではなく、世界中の国が合計7兆ドルも貸しているのです。ですから、これを資産として考えるのすら無理があるかもしれません。
しかし、だからと言って、それを我々日本人が必死になって稼ぎ出した事実は変わりません。特にプラザ合意でドル円の為替レートが3倍近くの円高になる中、それまで通りのコストで作っていれば輸出価格は3倍近くになってしまいます。ですから、我々は必死になってコストを削りました。しかし、コストは必ず誰かの売上または給与です。それを国を挙げて削り続ければ、当然人々の取り分は減り、国内にお金は回らなくなります。だから今、デフレなのです。そして、病的なコストカット体質が染み付きました。病的というのは、本来受け取るべき労働の対価を受け取れず、サービス残業など、世界で類を見ないぐらいの低賃金、長時間労働が当たり前になり、正当な労働対価を受け取らずに働き続ける。そうして稼いだ黒字が3兆ドルもの外貨となって全て海外に貸しっ放し。日本の労働者はそれを受け取るどころか、身を削って稼いでいる。
言い換えると、日本の労働者はこの30年で3兆ドルもの、ドル円が200円だったことも考えると、300〜600兆円分のタダ働きをさせられて来たということです。だからその30年を経て、私の初任給と息子の初任給が同じなのです。子どもの貧困、あらゆる層の貧困、パワハラ、過労死、ブラック企業から満員電車まで、全てこの延長線上にあります。つまり、この30年、根本的な失政を続けた結果、世界一のお金持ち国になっても、その果実を配分することのない、一億総ブラック国家になったということです。その失政を続けて来たのが今の自民党与党です。
ただ、だからと言って野党が良いわけでもありません。その根本的な失政を正せないまま、同じようにバッジをつけていた人たちが野党であり、その意味ではやるべき仕事が全くできていないからです。野党だけではありません。経済の専門家もマスコミも、ほとんどは「資金循環」を全く理解せず、まともな批判も指摘もできていません。それどころか、政府の借金が一人あたり何百万などという無意味な言説を垂れ流し続け、酷いのになると、政府の借金と国の借金の区別すらついていません。
我々はもっとまともな議論をする必要があります。それができる人が足りないのであれば、増やす必要があります。政界にも財界にもマスコミにも。リンクの動画は今年10月の講演の動画です。もし何かの参考になれば。
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