石棺で「TNT火薬1千トン分」の爆風と放射能を封じ込める
広島原爆は、爆発の力(熱・爆風)がTNT火薬約1万5千トン分(約63兆ジュール)、放射能(環境に出たセシウム137)が約89兆ベクレル(Bq)でした。
福島第一原発1~3号機には、原子炉格納容器の中またはその地下に放射能量(セシウム137)で広島原爆約「1万4千発分」の核燃料が溶け落ちています。これは、未反応燃料約「7千発分」を含んでいます。
また、建屋の中の地上15メートル(3階)の使用済み核燃料プールに広島原爆約「1万6千発分」の放射能(放射性物質)があります。地上と地下の合計で広島原爆「3万発分」です。そのうちこれまで環境に出てきたのは広島原爆168発分です(日本政府が2011年にIAEAに報告した値)。あるいは384発分です(イギリスの科学雑誌『ネイチャー』による)。
セシウム137もストロンチウム90も約30年で半減します。なので、30年「待つこと」で、広島型原爆「1万5千発分」の使用済み核燃料を取り出したことになります。更に次の30年で「7千5百発分」になります。これだけの有効な「技術」は他にありません。
そこで「二重石棺」によって将来の世代に廃炉を託そうというのが旧ソ連(現ウクライナ国)の計画です。
でも、福島第一原発では、「凍土障壁」もうまく機能していません。今後何十年も待つうちに地盤が液状化して沼地となり、原子炉を含めて建屋が倒壊して核燃料が地上にむき出しになる恐れがあります。これは時間との戦いです。沼地に「石棺」は無理です。特に現在の敷地は海抜40メートルの岸壁を12メートルまで削って造ったので地下水脈が浅く沼地化しやすい土地です。また、地上15メートル(3階)の使用済み核燃料プールも、今後何十年も待つうちに次の大地震が来て倒壊する恐れがあります。それらは、首都圏を含む東日本が消滅する破局的な事故になりかねません。
さらに、溶け落ちた未反応燃料の広島原爆約「7千発分」は、何年待っても半減しません。未反応燃料は、地下水など周囲に水が存在すると溶解したり濃縮されたりしながら自然に、あるいは無理に取り出そうとして、再臨界して核分裂連鎖反応を起こす恐れが今後「100万年間」あります。
そこで、沼地にならないうちならば、「石棺」と「地下粘土障壁」は、ある程度有効で現実的な手段だと思われます。
でも、「石棺」には「あきらめ」の意味があるので、原発を推進したい政府としては「石棺」を視野に入れること(すなわち、原子力発電なるものが「無残」な終わり方をするのだということを認めること)が国民や福島県民に知らされないように慎重に事を運ぶ必要があるでしょう。たとえば、当面は「石棺」という文言を用いない。あるいは、「石棺は用いない」と当面は公表しておいて「空気があっちを向くのを待つ」など。でも、それで事態が収拾できるわけでありません。
国民としては「石棺」のことを後になって知らされるほうがより残酷でしょう。でも、最後は(間に合えば)石棺になるでしょう。
チェルノブイリ原発4号炉の爆発はTNT火薬約500トン(広島原爆の約30分の1)に相当しました。福島第一原発の「石棺」には(チェルノブイリの経験から)少なくともTNT火薬1千トンの爆風と放射性物質を封じ込める能力が求められるでしょう。
その石棺もやがて老朽化します。やはり、100万年の活火山となるのでしょう。
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