「死んでいい隊員をきちんと用意しておくというのがセオリーです」元自衛官井筒高雄さん(文字起こし)という記事をご紹介します。
IWJが開催した井筒高雄「元自衛隊の立場から戦争法について」(戦争法を”ロック”するためにできること)20151105という動画の文字起こしのようです。
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ちょっと自衛隊の話にいきたいんですけど、9割がサラリーマン自衛隊だと、サラリーマン感覚の自衛隊だというようなことを、井筒さん、本にね書いてあるところがあるんですけど。
でも一方ですごい軍部の、軍部というか制服組の勝手な暴走みたいな匂いもするじゃないですか。
アメリカに行ってなんか約束してきたりとか。
戦争法案を作る前から、そのマニュアルでいろいろ教育したりとか。
それで一方で自衛隊員になる人いるの?今から。
そんな意見も出てるんですけど、その辺、ちょっとどんな具合ですか?自衛隊の今の感じ。
井筒高雄(元自衛隊):
今言われたサラリーマン自衛官とか、公務員自衛官の方が圧倒的というのは、ま、致し方ないと思うんですね。
「専守防衛で演習場と駐屯地の市街地戦をつくったプレハブで訓練をしていればすむ」っていうところだったんですよ。
たとえば80年代はレンジャー教育へ行く人たちっていうのは、視力が悪かったらそもそもチャレンジできなかったんですね。
ところが90年代になって、「もう視力が悪いとか言っていたらレンジャー隊員の育成が出来ない」って言って、視力が悪くても眼鏡をかけて矯正をすればいいと、わたしはレンジャー隊員になれたんですよ。
でも本当の戦場で眼鏡をかけた、あるいはコンタクトをして風圧で飛ばされた、あるいは寝てて眼鏡を壊しちゃったから「もう見えません、任務につけません」じゃ、話になんないですね。
ということなんですよ。
実態はね。
それから制服のキャリア組と言われている人たちは、なんで勇ましいか?というと、戦地に行かないからですね。
防衛省にいるから、駐屯地にいるから、ひょっとして行ったとしても、ベースキャンプの中でアメリカ軍とか多国籍軍の司令官達とオペレーションをやる人たちなので。
戦場に行くのは、高卒たたき上げが、だいたい行き着く”准尉”というところから、あとは”曹”という階級と”士”という階級のところが戦場の最前線に行くんですね。
もっというと、今の戦争というのは国対国の戦争というのからテロリストとの戦争というふうに変相しているので、もう、大きく国同士でドンパチをしない。
そうすると、一番戦争で可能性がないのが”海”なんですね。
その次が”空”でその次が”陸”という順序なんですよ。
そうすると防衛省の中で一番勇ましいのが”海”です。
今の統合幕僚長(※下記参照)。
次が”空”ですね。
最後が”陸”なんです。
なんで陸か?っていうと、先ほども申し上げたようにPKOで陸上自衛隊というのはこれからどんどん治安維持で駆けつけ警護という任務で派兵される可能性は極めて高いですね。
そのところで一番、白兵戦・地上戦で血を流すリスクが多いのが”陸”なんですよ。
ということなんですね。
白兵戦
刀剣などの近接戦闘用の武器を用いた戦闘のこと。現代では、近距離での銃撃戦と格闘戦も一体のものとして捉えており、距離によってCQBやCQCとも分類される。
いま、陸上自衛隊の数もというか、自衛隊そのものがそうなんですけれども、
指揮命令する30代から50代が一番多いんですね。
9割を占めます。充足率の。
で、一番戦闘の時に死んじゃってもコストが安くて、かつ任務に支障をきたさない。
そこまでの戦闘能力、公益の高い機器も使いこなせない、死んでもいい若い隊員というのが、いま7割しかいないんですよ。
つまり、命令する人たちは多くて、命令を聞いて動く出動の隊員が少ない。
将棋で言うと歩の駒が少ないんですね。
それでどうしてるか?というと、たとえば今年の3〜4月に入った”正規雇用の陸士”という10代、20代若い隊員の募集人員は約1000名からしているんですね。
で、”非正規雇用の隊員”というのが雇用制度であるんですけれども、自衛隊の。
陸上が2年、海と空が3年なんですけれども、非正規雇用の隊員を2500人増やしているんですよ。
なんでこういう取り方をするか?っていうと、ひとつは「指揮命令をする偉い人たちがいっぱいいる」っていう状況を整理しなければいけないからというのと、
もうひとつは、戦場のセオリーで言うと、コストだけを見た戦い方で言うと、
自衛隊は公務員ですから等級制。
「年数が少なければ少ないほど、戦死しても退職金とか死亡保障のお金とか、額が少なくて済む」んですよ。
かつ、「公益の高い機器とかも使いこなせないからそんなに支障をきたすこともない」というのが実態なんですね。
アフガニスタンで、デンマークという国は志願制です。
デンマークは10日間訓練をしたらアフガニスタンにイギリスと混成部隊で治安維持活動に着かせます。
イラク戦争の時にアメリカの兵士。
白兵戦・地上戦という治安維持活動をする隊員というのは災害派遣のための州兵という人たちを、月一回彼らは3万円もらって、あの訓練を受ける人たちを4ヶ月間訓練をしたらイラクに派遣するというのが実情ですね。
職業軍人ばっかりで公益の高い隊員ばっかりをどんどん戦場に出して殺していくっていうことはしないんです。
組織上あり得ないんです。
必ず戦争には死がつきものですから、死んでいい隊員。死んで支障がないという人たちをきちんと用意しておくというのがセオリーですね。
そういうことがこれから自衛隊は準備をしなければいけないということだったり、ちょっと先ほどのに付け加えると、
戦場に普通の軍隊は、装甲車とか救急車とかを持っていくんですよ。
日本には一台もありません。というのが実情なんです。
ですから自衛隊員は、法律ができたからといってバージョンアップはしないし、その備えも、実践的な備えというのが全くゼロに等しい中で、これから、安倍さんという戦争のリアリティーも自衛隊の実践もわからない人が最高指揮官で、彼がシビリアンコントロールとして暴走しているというのがいまの実情だと思います。
シビリアンコントロール
職業軍人でない文民が、軍隊に対して最高の指揮権を持つこと。
服部良一:
服務の宣誓の話が出たと思うんですけど、中谷防衛大臣はあれは変えないと言っているんですか?
井筒高雄:
「変えなくていい」と言っています。
リスクは変わらない。
これまでも、命をかけた崇高な任務で、これからもリスクも変わらないし、任務もなんらひとつ変わらないし、憲法9条も超越しないし、戦争しない。交戦権は認めないという状況は全く変わっていないから、服務の宣誓は変えないって言っています。
服部良一:夢想ですよね、それは。
井筒高雄:いや嘘ですよ、嘘。
服部良一:
それと、例えば民間人を誤って殺してしまったとか、あるいは上官の命令がないのにちょっと撃って殺してしまったとか、そういった場合は刑法で処罰されるんでしょ?
あるいはそれも日本の刑法なのか、相手国なのか?という話もあるみたいなんですけれども。
井筒高雄:
それは相手国で訴えられて拘束されれば相手国で処罰をされます。
そして帰ってきてまた刑法で処罰をされます。
というのが自衛隊の任務に就いた責任の取り方ですね。
取らされ方ですね。
で、国と防衛省は責任を取りません。
最高指揮官の責任は問われない。
全て「自衛官は」という法律で作られていますので、これは23年前のPKOの一番最初のスタートから何も変わっていません。
服部良一:全部個人の責任、うーん。
井筒高雄:そうです。
服部良一:ま、結局、自衛隊を海外に出すことができるような状況じゃないということですよね、はっきりしているのは。
井筒高雄:
そうです。これは小林節先生の方が専門的なお立場でご発言されていますけれども、交戦権を認めていないんだから、
交戦権って国内向けの言葉なんですね。
交戦権って何か?って言ったら、端的に言うと「戦争する」ということなんですよ。
戦争することを認めていないのに、自衛隊が戦争ができる法律を作っていま送り出そうとしているんですね。
PKOであれなんであれ、やることは武力行使、あるいは後方支援で武器とか弾薬とかね、あるいは隊員を運ぶというのは、それは戦争に加担している、賛成しているっていうことなんですけれども。
それを詭弁を使って、交戦権を認めていない、軍隊じゃない、と言っているから、残念ながら自衛隊はジュネーブ条約とかハーグ条約を総称して、国際人道法とかというんですけれども、そういう国際条約にも適用しない軍隊ではない、ま、武装集団ですね、自衛隊っていうのはね。
ですから捕虜になっても、湯川さんや後藤さんがイスラム国に惨殺されましたけれど、ああいう形で自衛隊員が死んだとしても、なんら問題はないというか、自衛隊は残念ながらそういつところで捕虜としての扱いを受けるという、
担保がない中で、これからどんどん危険な任務に、ま、ついていくという状況です。
国際人道法
第二次世界大戦後につくられた概念で、1971年の「武力紛争に適用される国際人道法の再確認と発展のための政府派遣専門家会議」で初めて使われた国際的な法規の集合である。
広義では、戦時・平時を問わず、人間の尊厳を保護することを目的とする国際法規範すべてを包括して国際人道法と呼ぶ。
ハーグ法
交戦国・交戦員の軍事作戦の行動の際の権利と義務を定め、国際武力紛争において敵を害する方法と手段を制約する
ジュネーブ法
戦争犠牲者を保護し、戦闘不能になった要員や敵対行為に参加していない個人の保護を目的とする
服部良一:自衛隊が一番抵抗勢力になるかもしれませんね、井筒さん。
井筒高雄:そうですね。
そういうふうに現実になっていくのかな、と思います。
おわり
※今の統合幕僚長
統合幕僚長 海将 河野 克俊(かわの かつとし)
プロフィール
昭和29年11月28日生(神奈川県出身)
防衛大学校(第21期生)
略 歴
昭和52年3月海上自衛隊入隊
平成 8年 1月1等海佐
平成 9年 1月第1護衛隊群司令部幕僚
平成10年 9月海上幕僚監部防衛部防衛課
平成10年12月海上幕僚監部防衛部防衛課 防衛調整官
平成11年12月第3護衛隊司令
平成12年 6月海上幕僚監部防衛部防衛課長
平成14年 8月海将補
平成14年12月第3護衛隊群司令
平成16年 3月佐世保地方総監部幕僚長
平成17年 7月海上幕僚監部監理部長
平成18年 3月海上幕僚監部総務部長
平成18年 8月海上幕僚監部防衛部長
平成20年 3月掃海隊群司令
平成20年11月海 将
護衛艦隊司令官
平成22年 7月統合幕僚副長
平成23年 8月自衛艦隊司令官
平成24年 7月海上幕僚長
平成26年10月現 職
統合幕僚長会談録 自衛隊の暴走許す危険明らか
2015年9月4日(金) しんぶん赤旗
陸海空自衛隊のトップである河野(かわの)克俊統合幕僚長が昨年12月、米軍首脳との会談で、戦争法案の成立時期について「来年夏まで」と伝えていたことが、統合幕僚監部作成の内部文書(会談録)で明らかになりました。法案の作成はもちろん、そのための与党協議さえ始まっていない段階で成立の見通しを米側に伝達していたもので、国民や国会を無視した自衛隊の許し難い暴走です。こうした暴走を野放しにする安倍晋三政権の下で、自衛隊を「海外で戦争する軍隊」へと変貌させる戦争法案の危険性はいよいよ明らかです。
法案の成立時期を「予断」
内部文書は、昨年12月の総選挙直後に訪米した河野氏が米軍首脳らと行った会談でのやりとりを記録した報告書です。日本共産党の仁比聡平議員が2日の参院安保法制特別委員会で暴露しました。
「取扱厳重注意」と記された同報告書によると、河野氏はオディエルノ米陸軍参謀総長との会談で、戦争法案について「予定通りに進んでいるか」と問われ、「(総選挙での)与党の勝利により来年夏までには終了するものと考えている」との見通しを伝えました。
戦争法案をめぐっては、統合幕僚監部が今年8月成立を前提にした部隊編成計画などを示した内部文書を作成し、自衛隊の指揮官らに説明していたことが大問題になっています。中谷元・防衛相はこの文書について、今年5月の法案の閣議決定を受け、中谷氏の指示に基づいて作成されたとし、「国会における審議、法案の成立時期を予断しているものでは全くない」と弁明してきました。
しかし、今回の河野氏の発言はまさに法案の成立時期を「予断」したものであり、しかも、それをいち早く米軍に伝えているという点で問題は極めて深刻です。言い逃れは決して許されません。
報告書には他にも、自衛隊の暴走ぶりが随所に現れています。
例えば、
▽アフリカ・ジブチの「海賊対処」用の自衛隊基地について中谷防衛相は「ジブチの自衛隊拠点の強化や(その他の目的での)活用を念頭に置いて検討しているわけでない」と国会答弁しているのに、河野氏は「今後の幅広い活動のためジブチの利用を拡大させたい」と表明(デンプシー米統合参謀本部議長との会談)
▽政府の今年度予算でも海外調査費がついているだけなのに、「海上自衛隊においては水陸両用戦に供する艦を建造する予定」だと強襲揚陸艦導入を示唆(ダンフォード米海兵隊司令官との会談)―などです。
沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設では「安倍政権は強力に推進するだろう」と述べ、中谷防衛相が否定している自衛隊との共同使用も「辺野古への移転やキャンプハンセン、キャンプシュワブでの共同使用が実現すれば、米海兵隊と陸上自衛隊との協力が一層深化する」と語っています(同)。
首相と防衛相の責任重大
垂直離着陸機オスプレイの問題でも「(同機の)不安全性(ママ)を煽(あお)るのは一部の活動家だけ」(ワーク国防副長官との会談)と事実をねじ曲げ、言いたい放題です。
この間、統合幕僚監部の暴走をかばいだてしてきた安倍首相や中谷防衛相の責任は重大です。国会での事実の究明は不可欠であり、自衛隊の暴走に拍車をかける戦争法案は廃案しかありません。/p>
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